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日本歯科骨粗鬆症研究会 理事長 森井浩世
森井氏写真

深刻な骨粗鬆症問題
歯周病と全身の骨粗鬆症と関連づける方向に
歯科、医科、柔道整復の専門家による「大阪宣言」


1.問題の発端


 骨粗鬆症は骨量の減少と骨質の劣化によってわずかの衝撃によって骨折する状態である。骨量の減少は更年期を迎えた女性で、卵巣から女性ホルモンが分泌されなくなって生じる。閉経を迎えると骨量は急速に減少し、50歳代で8%、60歳代で 28%、70歳代で33%、80歳代で33%の頻度をしめす(骨粗鬆症診療ハンドブック改訂3版 医薬ジャーナル社平成14年)。男性でも女性に遅れて加齢に伴って増加し、平成11年には1100万人と推計されている。骨粗鬆症におけるもっとも深刻な合併症は骨折である。骨折の生じやすいのは大腿骨頚部、椎骨、撓骨遠位骨、上腕骨近位部、肋骨などであるが、前2者が重大な影響をおよぼす。大腿骨頚部の骨折によって歩行不能、寝たきりのきっかけとなり、痴呆にいたる場合もある。発症後3年で30%ほどが死にいたるという報告もある。椎骨の骨折によって身長減少、肺活量の低下、腰背痛のほか生存率の低下につながるとされている。
 女性で50歳を過ぎてすぐに発症する人は不利な条件を持っていると考えられている。このような条件を危険因子という。危険因子としてカルシウム、ビタミンD蛋白質などの栄養素の摂取不足、運動不足、成長期からの骨発育とその後の骨量維持不良などがある。
 歯周病など歯の異常も危険因子と考えるべきであるというのが我々の提案である。カルシウムを多く含む食品は野菜、丸ごと食することのできる小魚、海草などよく咀嚼する必要のあるものが多く、したがって健康な歯の存在が重要ということになる。咀嚼力の低下は顎骨だけなく頭蓋骨のほかの部分も萎縮をきたし、頭蓋骨全体の重さが減少してしまう。

2.大阪宣言

 歯周病とこれにともなう顎骨の萎縮ないし骨粗鬆症は全身の骨粗鬆症と関連づけて考える方向がありうると考え、歯科、医科、柔道整復の専門科が集まり大阪宣言を採択した。


「大阪宣言」
我々は一千万人を超える日本人に骨粗鬆症患者の骨粗鬆症患者が、専門医の診断、治療、援助が受けられる条件を確保、整備するために、誠心誠意努力することをここに誓う。
 そのことが骨粗鬆症患者の生活の内容を向上させ、結果として健康な社会をもたらすことを確信する。
 骨折という病態を防ぎ、寝たきり者を減らすために、また生活習慣病である歯周病の予防のために、我々はあらゆる努力を惜しまない。
 我々は、目的達成のために個人または組織を通じてあるいは政治的手段を用いて働きかけ、人々が骨粗鬆症の原因、骨折の危険、予防法、診断法、治療法などを熟知できるようにする。柔整からの対応もこれに加わる。また我々は骨粗鬆症による大腿骨、椎骨その他の部位の骨折を撲滅し、歯周病による歯の喪失を防ぐために活動する。(平成14年3月24日)

歯周病・骨粗鬆症専門家会議

森井浩世、辻 竹康、高石佳知、寺川圀秀、松尾 通、中島幸一


3.今後の課題


歯周病と骨粗鬆症の相関についての医学的研究
顎骨骨密度の測定方法
骨粗鬆症治療薬の顎骨骨粗鬆症・歯周病への作用

 これらの課題を臨床、基礎、公衆衛生の立場から研究をすすめる必要がある。
 厚生労働省は「研究日本21」を作成し生活習慣病の克服に向けたプランを提案している。それによると栄養・食生活、糖尿病、循環器病、がんなどを主要な検討実施項目にあげている(図説、国民衛生の動向 2000)。今後本研究会を学際的立場で運営し、上記の課題を検討する。

(おおさかメディカル 第38号より)

■プロフィール

日本歯科骨粗鬆症研究会理事長
WHO骨粗鬆症対策委員 / 大阪市立大学名誉教授 / 日本骨粗鬆症学会理事長
骨粗鬆症財団常務理事 / 臓器移植ネットワーク / 近畿ブロック評価委員会委員長


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