生体用シリコーン床用レジンの化学結合により高度な安定と使用感を実現した最新のシリコーン裏装義歯
Clinical application of denture construction relined with bio-compatible silicone materials(II).

清見好伯(1)/坂口喜史夫(2)/景山圭二(3)

(1)大阪市中央区・株式会社グッド・テック(旧社名:株式会社グローバル帝塚山)
〒540−0021 大阪市中央区大手通3−3−3日宝東本町ビル Tel.06−6947−9678
(2)神戸市垂水区・坂口歯村医院
〒665−0038 神戸市垂水区星陵台5−12
(3)島根県松江市・ピースデンタルサポート有限会社
〒690−0017 松江市西津田7−11−8

歯科技工 The Journal of Dental Technology
第29巻 第12号 別印 平成13年12月1日発行 より

■内容
 
 Part1
シリコーン−樹脂の化学結合によりバージョンアップした生体用シリコーン裏装義歯
 Part2
生体用シリコーン裏装義歯の製作法と臨床
 Part3
生体用シリコーン裏装義歯に効果的な義歯洗浄剤の追求

Part1
  シリコーン−樹脂の化学結合によりバージョンアップした生体用シリコーン裏装義歯

■はじめに
 前回,生体用シリコーンを義歯の裏装材として応用することを発表させていただいてからすでに4年以上経過した(清見好伯ほか:生体用シリコーンを裏装した義歯の製作とその応用範囲.本誌,27(5):435〜448,1997).
 この間臨床例を重ねるにつれ,数多くの歯科医師の先生がたからのアドバイスを受けるとともに問題点を指摘していただき,たいへん感謝申し上げている.読者諸氏におかれても,生体用シリコーンがいかに粘膜に対して親和性と適応性があることを理解いただき,義歯裏装材として最も適していることが改めて確認いただけたのではないかと思う.また,このような軟質弾性の裏装材を使用することによって,咬合力が大きく増加することも認識されたと思う.
 当時,この義歯がNHKのニュースで数回にわたり紹介され,一般の方(患者サイド)からの反響の大きさに驚かされ,さらなる開発の進展の必要性を感じることとなった.残念なことに,当時はまだ技術的に,理想目標の「生体用シリコーンと床用レジンの化学的な結合」まで達していなかったので,裏装材としての生体用シリコーンを,特殊な接着材を用いた“接着”により義歯と一体化させていた.そのため市販の軟性裏装材とあまり変わりのないシリコーンの“剥がれ”や“変色”を生じさせていたことに,筆者としても反省している(図1〜10)
 以来筆者らは,これらの貴重な資料や意見をもとに,当初からの技術的な理想目標である「樹脂とシリコーンの化学的な結合」を得るべく努力してきた.そして近年,この目標を達成させることに成功したので,改めて生体用シリコーン裏装義歯の必要性を再考するとともに,製作法と臨妹応用を紹介したい.

■義歯への軟質弾性裏装材裏装の必要性
1.義歯床の要件と裏装材の相乗効果

 数多くの補綴学書および生理学書から,“義歯”に関する事項をまとめると,理想的な義歯床とは,
@ それぞれの口腔内の条件に適した硬さを持つ
A 弾性の選択ができる−組織の弾性に応じて
B 回復の速い弾性一変形力が除かれると,素早く元の形に戻る
C 咬合面側は硬く,組織に接する側は圧縮可能である
D ショックを吸収する

  E 義歯床からその下の床下組織に伝わる圧力を軽減する
F 必要な柔軟性を持つように,重合時に自由に調節することができる
とされている.また,同時に上記の義歯床の条件が満たされれば,
(1) 軟質・弾性裏装材によって過度な咬合圧を床全体に均等に分散することにより,血流・新陳代謝障害を除去し顎堤によい結果をもたらし,骨組織の再生を促す
(2) 義歯のより完全な周縁封鎖
(3) 口腔の温度感覚・触覚・圧覚および味覚の改善
(4) 床下組織に伝わる圧力を軽減させることにより,部分的および全体的な疼痛の発生を防ぐ
(5) 適合性の改善
に効果が得られる.そしてその裏装材の素材としては,材質的に非常に安定しているためシリコーンゴムがよい(これら論文中に使用されたシリコーンはderometer30である)と数十年前から言われてきた2,3)
 しかし当時としては,シリコーンゴムの接着および一体化は不可能とされていたため,シリコーン系素材の裏装材としての開発がなされることになった.理想的には,純粋なシリコーンゴムを使用することが望まれていたが,その接着・一体化の開発には至っていなかったのである.
 また,一言に“シリコーンゴム”といっても,工業界には何百何千種類というものがあり,それぞれの用途に応じて製造販売・使用されている.筆者らが応用しているものは,”医科用”として製造された(図11〜13)生体用シリコーンゴム〔シルスキンクリア(製造元:イギリス・Depuy Export社,輸入元:高研)〕であり,その違いについては前回の論文にて詳しく説明させていただいた.生体用シリコーンは,国内でのシリコーンメーカー(信越化学・東芝シリコーンなど)による製造販売はまったくされていないのが現状であり,その点が大きな難点といえる.

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