第17回日本歯科人間工学会/日本人間工学会研究発表会でデンタルピックの効果が発表されました!
以下参照文書です。


歯間乳頭部血流に対する、デンタルピック、ラバーチップ、歯間ブラシ使用の効果


福岡医療短期大学歯科衛生学科、(株)広栄社
香月 真理子、日高 三郎、稲葉 修


緒言

 口腔の健康管理や病的兆候を予測する方法として、レーザードップラー血流計を用いた血流測定が知られている。この方法によって、これまでに口蓋粘膜、歯髄、歯肉等の血流を測定した報告がある。われわれは、歯肉腫張の初発部位である歯間乳頭の血流について、レーザードップラー血流計を用いて、健康な血流動態を明らかとする研究を行ってきた。
 補助清掃器具としては、デンタルフロス、歯間ブラシ、デンタルピック、ラバーチップ、口腔洗浄器等がある。デンタルピックは、歯肉のマッサージ効果を目的とするものである。しかし、その効果を実験的に確かめた報告はない。
 今回われわれは歯間乳頭の血流に対する、補助清掃器具、デンタルピック、ラバーチップ、歯間ブラシの使用効果をレーザードップラー血流計を用いて、短期大学女子学生の非喫煙者と喫煙者を被験者として検討した。その結果、デンタルピックがラバーチップと同等の血流増加効力を発揮することを見つけたので報告する。



実験方法

1、被検者
 被検者は正常歯列で臨床的に歯周組織所見を認めず、全身的にも健康で、貧血や循環器疾患の既診のない者で、本研究の目的を説明した上で被検者となることを承諾した非喫煙者11名と歯肉にやや発赤が見られた喫煙者11名の22名である。平均年齢は19.1才であった。

2、血流測定
 測定の1時間以上前から被検者の飲食物の摂取を禁止した。歯科用ユニット上の被検者を仰臥位で安静状態に置き、開口させて一人の測定者が血流測定用プローブを口腔内に挿入することで測定を行った。測定部位は、上顎左右の中切歯と側切歯の唇側歯間乳頭2ヶ所である。歯間乳頭の血流測定においては、歯肉辺縁を直線で結んだ線と接触点からの垂線との交点を求め、その交点から歯冠方向に1.5mmの位置を測定した。補助清掃器具はデンタルピック(広栄社、大阪)、ラバーチップ(デンチケーター、USA)、歯間ブラシ(スーパーS、広栄社)の3種を使用した。測定はまず安静時の左右の測定部位を60秒間測定し、その後、左側12歯間乳頭をデンタルピックで30秒圧迫振動させた後、60秒間測定した。次に左側12歯間乳頭をラバーチップで30秒間圧迫振動させた後、60秒間測定した。最後に右側12歯間乳頭を30秒間歯間ブラシで往復運動させた後、60秒間測定した。 測定プローブの先端は歯肉面に垂直に表面から約3mmの距離に保持した。

血流測定には、半導体レーザー血流計(タイプALF21N、ADVANCE社、U,S,A)と非接触用プローブ(タイプNCD、ADVANCE社、U,S,A,)を用いた。送光ファイバーから放出されたレーザー光は組織中で散乱反射を繰り返し、流動する赤血球に当たるとドップラー効果によりその周波数に偏移を生じ、散乱反射光は受光用ファイバーから光検出器へ導かれ電気信号に変換される。ドップラー周波数スペクトルの帯域幅から血球速度(Vlocity:o/sec)、またその振幅から血球量(Mass:%)が得られ、VとMの積により血球量(Flow:ml/min/100g)が算定される。測定は1分間連続的に行い、記録計で血流量と血球速度を同時に記録した。

3、歯間乳頭の血流動態
 あらかじめ行った10名の学生の健康歯肉で測定した歯間乳頭の血流動態につき簡単に記述する(香月他、日衛学誌28:36-40、1999)。血流の平均値は上顎の頬唇側で14.6、上顎の口蓋側で14.2、下顎の頬唇側で15.0、下顎の舌側で14.7であった。とくに上顎正中部では14.1±1.2であった。なお、測定の再現性に関しては、手で保持した歯間乳頭部の血流量測定の変動数は約4〜8%であった。

4、統計
 本実験のデーターは、3回の実験から得られたものであり、平均値±SDで表した。統計的検定はANOVAとStudentのt-テストを用いて行った。



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