結果

補助清掃器具の効果
 測定部位としては、測定および補助清掃器具を操作することが容易であることから上顎左右の中切歯と側切歯の唇側歯間乳頭を選択した。
 非喫煙者11名の学生については表1に示すように、デンタルピック、ラバーチップによって11名中6名(被検者2,3,4,7,10,11)で血流が増加した。増加しなかった残り4名も操作時間を60秒間に延長することで有意に増加することが見られた。全体で見れば、左上12歯間乳頭をラバーチップで30秒間圧迫振動することによって有意の増加が見られた。全体では右上12歯間乳頭を歯間ブラシで30秒間頬舌的に往復運動すると平均値は19.0±4.2となり、対照血流と比較して有意に増加していた。
 次に喫煙者については表Uに示すように、デンタルピック、ラバーチップを操作すると、11名中8名(被検者1、3、4、6、7、8、9、10)の血流が増加していた。全体としては左上12歯間乳頭の対照の血流の平均値は16.8±7.2であった。左上12歯間乳頭をデンタルピックで30秒間圧迫振動すると全体の平均値は20.9±5.9となった。対照血流と比較して、有意に増加していた。同様に、左上12歯間乳頭をラバーチップで30秒間圧迫振動すると全体での平均値は21.5±5.9となった。対照血流と比較して、有意に増加が見られた。右上12歯間乳頭の対照の血流値の平均値は15.6±6.2であった。右上12歯間乳頭を歯間ブラシで30秒間往復復運動すると、11名中3名(被検者2、4、7)の血流の増加が見られた。全体では平均値は17.3±5.0となり、この場合も対照と比べて有意差があった。また、非喫煙者(15.1±5.6と14.9±5.5)と喫煙者(16.8±7.2と15.6±6.2)では、喫煙者の方が対照の血流が高くなる傾向がみられた。



考察

歯周疾患のほとんどが歯肉炎から歯周炎へと移行するが、歯周炎の初期に血管の拡張と充血による発赤や腫張が歯間乳頭に見られ、その進行により辺縁歯肉、付着歯肉へと発展してゆく。 補助清掃器具は、歯周疾患の予防や初期の治療の一環として、歯間部の清掃及歯肉マッサージを目的とするものであり、デンタルフロス、歯間ブラシ、デンタルピック、ラバーチップ、口腔洗浄器等がある。

これらの中でも歯間乳頭に接触する面が広く刺激を与えやすいデンタルピック、ラバーチップ、歯間ブラシの3種を今回の測定に使用した。また、今回は健康な歯肉の非喫煙者の学生のみでなくやや発赤の見られる喫煙者の血流も測定した。喫煙は歯周疾患の大きなリスクの1つであるという認識はすでに一般的である。
 デンタルピックとラバーチップでは11名中6名、歯間ブラシでは11名中5名で有意に血流が増加していた(表1)。このことよりデンクルピックがラバーチップと同等の効力を発揮することが明らかである。また、歯間乳頭の血流の刺激に対する感受性に個人差があることも明らかとなった。補助清掃器具、デンタルピック、ラバーチップ、歯間ブラシを30秒間操作後に非喫煙者と喫煙者とに関係なく血流量は有意に増加した(表1、2)。つまり、これらの器具の刺激によって血流が良くなることを強く示唆する。これらの器具使用は、歯周疾患の予防に効果があると考えられる。
 非喫煙者と喫煙者では対照の血流が喫煙者の方が左右とも高い傾向を示した。喫煙者の中には、歯肉の発赤がみられたのでそのために高い数値を示したものと考えられる。


結論

 臨床的に健康な歯周組織を持つ女性と11名と喫煙習慣がありやや発赤が見られる女性11名の上顎左側中切歯と側切歯の歯間乳頭歯肉、上顎右側中切歯と側切歯の歯間乳頭歯肉の安静時血流量をデンタルピック、ラバーチップ、歯間ブラシの3種の器具を30秒間操作した後、血流量の変化を非侵襲的にレーザードップラー血流計を用いて測定した。その結果、デンタルピック、ラバーチップ、歯間ブラシの使用は血流の増加を促し血液の循環を良くすることが明らかになった。デンタルピックが血流を促進することを確かめたのはこの報告が初めてである。



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