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 日本歯科漂白研究会

■ドメスティック・バイオレンス(D.V)研修会

「日本の家庭内暴力の現状について」 講師  信田さよ子

7月5日(木)午後7時より当研究会の計画している社会奉仕活動「ギブ・バック・ア・スマイル運動」実施のために日本のDVの現状について研修会を開催した。以下は当日の模様である。

日本歯科漂白研究会は、設立当初から歯科医師の社会的貢献の一環としてDV(ドメスティック・バイオレンス:家庭内暴力)の被害者で口腔や歯牙の損傷を受けた人に対するボランティア活動−ギブ・バック・ア・スマイル運動−の実施を検討してきたが、同研究会は7月5日午後7時から山王パークタワーにおいて、DVの実態を知ることを目的に臨床心理士の信田さよ子氏(原宿カウンセリングセンター所長)を招き講演会を開いた。信田氏の講演テーマは「日本の家庭内暴力の現状について」。なお、DV法が超党派の女性議員により本年10月に施行されるが、これから新聞紙上等で種々取り上げられ社会問題化すると思われる。
講演会に先立ち挨拶した松尾通会長は「ギブ・バック・ア・スマイル運動は、アメリカの審美歯科に携わる方を中心とするボランティア活動で、家庭内暴力、特にパートナーによって歯を折ったり失ったりした人達に無償で治療するという運動であり、間接的にはDVを防ごうという運動につながっている」と述べた上で、今後の学会のあり方について「自分達で勉強するだけでなく、どう社会貢献を行っていくかが大切であり、社会貢献をすることにより歯科医師としての仕事もさらに広がっていく」との思いを語った。
講演に移り、信田氏は金属バット事件に代表される1970年代から90年代の児童虐待など今日に至る家庭内暴力の流れを述べた後−△97年のDVに係わる東京・神奈川・埼玉等の調査結果(成人女性の3人に1人が何らかの形で男性からの暴力を経験)、△夫の暴力による離婚例は一割に満たない、△被害者である女性の殆どが夫から逃げないしDVと認めない、また例えシェルター等に逃げても夫からの連結で元の木阿弥一等々の家庭内暴力の実態を説明した。
1969年 お茶の水女子大学文教育学部哲学科  卒業
1973年 お茶の水女子大学大学院修士課程修了(児童学専攻)駒木野病院勤務、嗜癖問題臨床研究所(CIAP)付属原宿相談室長を経て
1995年 12月に原宿カウンセリングセンターを開設、所長として現在に至る。臨床心理士
(著書)
「アダルト・チルドレン完全理解」
「愛情という名の支配」
「依存症」 (文春新書:文芸春秋社)など。
■歯料医に多いDV
また、暴力は依存症の一種と強調する信田氏は、緊張→解放(Violence)→悔恨(反省)の暴力三相説を解説した上で、成功例・失敗例を織り交ぜ2〜3の例を挙げて説明し、「暴力依存症の夫はくり返すが、習愕化しているため治ることはない」とした。また、被害者の女性の主訴は「夫の暴力をやめさせる秘訣を教えて欲しい」であり、夫の暴力から逃げると言うことにならない、即ち夫の暴力をDVとは思っていないと分析した。さらに、△被害者である女性は、美人であり知的、かつ自己主張できる女性(つまり、DVである加害者はコンプレックスを持つ男性)で、リペンジ型・夫を救いたい型・子供を救いたい型・自覚的被害者型(殴られ妻シンドローム)
のタイプがある、△加害者の職業は歯科医師・検察・学校の先生が多い、△DVから逃げた女性は監禁することが必要(グループミーティングなどで新しい生活への準備を教え込む)、△PTSD(心的外傷後ストレス障害)の特徴などについて語った。
終わりに信田氏は、虐待は発見・通報・介入・一次保譲の手順となるが、DVの場合は「被害者自らが訴える以外にない」とするとともに、公的補助が全くないシェルターヘの支援を要請、また歯科治療を受けにきた患者が明らかにDVの場合は、歯科医師がDVと名付けることの意義・必要性を訴えた。
講演終了後、「被害者を歯科医学的に救済するボランティアが可能か」の質問に、信田氏は「DVの歯科治療の場合、自責診療になってしまうため、シェルターと連携し、一般診療が終わった後の夜、ボランティアで巡回し歯科治療をしてくれれば有り難い。その際、一次保護者であるシェルターの職員と歯科医師がDVについて共通の認識を持つことが大切だ」とネットワークづくりの重要性を語った。

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